研究概要 |
本年度は,昨年度製作したクライオプローブを用いて実験的解析的研究を遂行し,凍結手術の際の効率的な冷却手法についての検討を行った.また昨年度の検証実験で明らかとなった,連続運転による最下点到達温度が長時間維持できないという問題点の克服のため,クライオプローブ先端部の構造を見直し,新たな先端部設計のクライオプローブの製作も行った. 圓山代表者により生体冷凍治療クライオプローブ先端部の再設計が行われ,先端部の熱が効率的に冷媒側に輸送されるデザインとし,高熱流束冷却伝熱制御を可能とした.新たに製作されたクライオプローブの性能評価は,小宮分担者による生体を擬似した寒天を用いた実験で行われた.これにより,新設計のクライオプローブでは長時間運転による最低到達点温度の上昇は認められず,昨年度製作したプロトタイプの問題点を克服できたと位置づけることができる. また,凍結手術の際の効率的な冷却方法についても解析的・実験的に検証を行った.解析的には生体伝熱方程式を用いて高精度数値シミュレーションを行い,表皮深部の真皮層の過渡冷却現象を視覚的に理解し,そこから高効率冷却法を検討した.また実験的には,モルモットの背皮を用いた動物実験を行い,数値シミュレーションを用いて検討した冷却方法での過渡冷却現象を観察した.これらの実験より,目標としている細胞を高効率に壊死させるには,急速冷却の他に繰り返し冷却法を施すことで達成できることが明らかとなった. これらの研究成果は,別紙に示すごとく国内外の学術講演会にて発表を行っており,熱工学の分野にとどまらず医学分野においても高い評価を得ている.
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