研究課題
極海に生息する魚から抽出される不凍化タンパク質タイプIの主要成分であるHPLC6に注目し、これを合成して、特定のアミノ基に蛍光試薬を標識した。このHPLC6の水溶液において、ゆっくりと成長する氷結晶界面近傍におけるHPLC6の位置、温度変化、氷結晶変化の計測を行った。この目的のため、微小領域の蛍光強度、温度、界面位置を高精度で計測できるシステムを製作し、緩やかな冷却を可能とする装置と組み合わせ、現有の高性能顕微鏡のステージに設置した。測定の結果、冷却板、温度計測用極細熱電対、観察画像の処理などが妥当であることを確認した。さらに、HPLC6に特有の凝固点降下を得た。また、氷結晶の成長とともに、界面付近ではHPLC6が界面に拘束され集中していること、結晶中に筋状の不凍部が現れることを示した。これらの非一様性が、不凍化のメカニズムに関連する可能性を示した。一方、HPLC6の一部である4個のアラニン残基を含むポリペプチドモデルと、3個のアラニン残基と1つのトレオニン残基からなるポリペプチドモデルを作成し、これらを含む水、あるいは氷-水混合系に関する分子動力学シミュレーションを行った。自己拡散関数、動径分布関数、角度分布関数などの統計量を比較し、ポリペプチドモデルの側鎖サイトがその周辺の水分子へ及ぼす影響について検証した。計算結果より、各モデルの極性サイト(酸素原子や水素原子など)の周りでは、水中の水分子との水素結合による結びつきが顕著に表れる事を確認した。また、極性サイトは氷中の水分子との水素結合にも貢献すること、このとき非極性サイトが水中の水分子の氷表面への接近、すなわち凝固を阻害する可能性があること、を示した。
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Proceedings of the 6th World Conference on Experimental Heat Transfer, Fluid Mechanics, and Thermodynamics
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日本機械学会関西支部第80期定時総会講演会論文集
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