研究概要 |
Coアセチルアセトナートを用いたポリオール還元法において,界面活性剤(オレイン酸)と高分子保護剤(trioctylphosphine oxide, TOPO)の両方を添加することによって,2-5nmの径でアスペクト比が10以上のファイバー状の粒子が平均直径4nmの球状粒子とともに得られた.ファイバー状の粒子が得られるための合成条件として,反応温度が200℃以上であること,界面活性剤と高分子保護剤の両方を添加することがあげられる.反応過程を調べると,はじめに生成するのは球状粒子で,TOPOを添加するとファイバー状の粒子が生成することがわかった. X線回折とEDXによる組成分析の結果,球状粒子はhcp構造を有するCoであることが特定されたが,ファイバー状の粒子には酸素の存在が確認された.しかし,Co酸化物の存在を断定する結果は得られなかった.これはファイバー状の粒子の存在比率が低いことも一因であると考えられる.FT-IRの結果からファイバー状粒子にはTOPOがCo-Oのボンドを介して結合していることが示唆された.この結果から考察すると,ファイバー状粒子はTOPOをテンプレートとして成長していることが推測される.酸素の存在はCoのファイバー状粒子の表面層が酸化することに起因するとも考えられる. 磁気特性は球状Co粒子とファイバー状粒子との混合状態で行なった.その結果,保磁力は低いものの室温で強磁性を示すことがわかった.しかし,前記の通りファイバー状粒子単独の磁性についての知見を得ることはできなかった.ファイバー状粒子の分離や生成率の向上を図る必要がある.
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