研究概要 |
近年,環境保全の観点から非鉛系の圧電材料の開発が求められており,本研究では,ペロブスカイト型酸化物の圧電特性と構成金属イオンの質量比にフォノンを介した相関があることを考慮して材料設計を行い,非鉛であるBi(Fe_xAl_<1-x>)O_3に着目した.昨年度,Bi(Fe_xAl_<1-x>)O_3薄膜の合成には成功したものの,明確な強誘電性を確認するには至らなかった.これを解決するためには薄膜の組成を厳密に制御して製膜を行う必要があることが明らかとなったので,本年度は発光分光分析を用いて,レーザーアブレーション状態の解析を行い,レーザーエネルギー密度や製膜ガス圧力が薄膜の成長にどのような影響を及ぼすかについて調べた.また,製膜に用いるターゲットの改善方法として,放電プラズマ焼結法を用いて,高密度なBiFeO_3ターゲットを用いることも検討した. レーザーアブレーション時に発生するプラズマ発光(プルーム)に対して行った発光分光分析から,プルーム中の飛散粒子はFe,Biの中性原子と原子状酸素であることが明らかとなった.これらの飛散粒子のプルーム内での分布は,プルームの外側に原子量の小さいFeがより多く存在し,またターゲットから離れるにつれて原子状酸素の比が減少していた.これらの飛散粒子の存在比が,製膜条件の変化によってどのように変化するかを調べたこところ,Fe,Biの比はレーザーエネルギー密度や酸素ガス圧力によってはあまり変化しなかった.一方で,原子状酸素の比は酸素ガス圧力には依存性を示さなかったものの,レーザーエネルギー密度を増加させるにつれて増加することが分かった.また,ターゲットにBi_2O_3が存在することによっても原子状酸素の比が増加することも明らかとなった.この原子状酸素の比が多い製膜条件で実験を行うことによって,Bi(Fe_xAl_<1-x>)O_3薄膜の酸素欠損量を低減できると期待できる.
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