研究概要 |
人工衛星等に搭載される電子機器を宇宙空間で正常に動作させるには搭載機器の温度を許容される範囲内に収めうる熱設計を行なう必要がある。このため、衛星搭載機器の熱設計に際しては、機器の温度を所定の範囲内に収め、しかも長期間にわたって温度を一定に保ちうる材料の選定が必要となる。宇宙機器の表面形成法として、一般に金メッキや黒色ペイントを塗布する方法が用いられているが、本研究は衛星搭載機器などの熱制御をより効率的に行なえる表面を形成する方法として、黒体面に近い光反射特性を示すことが期待されるカーボンファイバーパイルを用いた静電植毛面の形成と、この方法によって得られる植毛面の特性を明らかにすることを目的として平成16年度、17年度の2年間にわたり行なったものである。 平成16年度の研究ではカーボンファイバー植毛面の形成条件と植毛面の光反射特性の検討を行ない、当初の目論見どおり、カーボンファイバー植毛面が、紫外光〜赤外光の広範囲な波長領域の入射光に対し、反射率1%以下の低い反射率を有する植毛面形成条件を明らかにすることができた。 この成果を基に、平成17年度の研究では、主にカーボンファイバー植毛面の放射伝熱特性について検討した。具体的には作成したカーボンファイバー植毛面試料について、光反射率の測定を行なうのと併せて、スペースチェンバーを利用して宇宙環境を模擬した超高真空・極低温環境下における熱放射率をカロリメトリック法により測定し、カーボンファイバー静電植毛面の放射伝熱特性について総合的に考察した。その結果、カーボンファイバー植毛面の熱放射率の測定値は最高値0.98と評価され、黒体面に近い値であることを確かめた。 本年の実験結果を含む本研究の成果は、平成17年の静電気学会全国大会、2005年8月に中国北京市で開催された高電圧工学国際会議(ISH2005)において研究発表を行なうとともに、静電気学会誌上の論文に取りまとめ報告した(静電気学会誌、Vol.29,No.2、pp.)
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