研究概要 |
ビスマス系に代表される異方性の強い銅酸化物高温超伝導体は,結晶構造が超伝導層と絶縁層が交互に積層しており格子サイズでジョセフソン接合が多数積層した系として機能することから固有ジョセフソン接合あるいは積層固有ジョセフソン接合と呼ばれている。このような結晶内部に存在する積層ジョセフソン接合では,超伝導層が極めて薄いために接合間の磁気結合が極めて強く,磁束量子を伴うジョセフソン・ボルテクスの振る舞いが従来の接合系とは大きく異なる。本研究では,ビスマス系銅酸化物高温超伝導体の固有ジョセフソン接合におけるジョセフソン・ボルテクスのダイナミクスとそれに付随する量子機能性を磁気的に強結合した積層ジョセフソン接合における磁束量子密度波(Vortex Density Wave)という観点から検証している。 平成16年度の研究成果の概要は次のとおりである。 1.フラックスフロー状態の固有ジョセフソン接合の高周波応答特性が高周波に同期した磁束密度波が接合内に励起することで説明できることを示唆した。 2.結合サイン・ゴルドン方程式にジョセフソン・ボルテクスのピニング効果を織り込み,ピニング効果が磁束フローに与える影響の数値シミュレーションを可能とした。 3.パンケーキボルテクスを導入した固有ジョセフソン接合の高周波誘導磁束フロー特性を測定し,シャピロステップ的な応答が現れることを発見した。 これらの成果は,積層固有ジョセフソン接合内のボルテクス・ダイナミクスの解明に寄与するだけでなく,磁束フロー発振に必要とされるコヒーレントなボルテクス運動を実現する上で極めて重要な知見を含んでいる。平成17年度は,周期的な導入したピニングがボルテクス・ダイナミクスに与える影響に着目して数値シミュレーションと実験の両面からコヒーレントなボルテクス運動とそれに伴う高周波放射やジョセフソンプラズマ励起の可能性を探る。
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