現在のIT産業を支える電子デバイス技術は、貴金属および希土類元素などの貴重な資源を多く消費し、かつ、高集積化の限界が近づき将来性が危惧されている。しかしながら、21世紀の科学の発展では、省資源化および省エネルギー化に基づく新規デバイスの開発が、人間と機械の調和の観点では必要不可欠である。本研究は、微細空間における気泡の吸着及び脱離現象を利用した新機能デバイスの開発を目的とする。気泡の吸着と脱離をメモリデバイスに応用する課題として、選択的に気泡を脱離させる技術の確立が必要不可欠である。このため、本研究ではAu膜と波長550nmの光とのプラズモン励起による共鳴吸収を用いて、光照射部のAu膜の表面エネルギーを変化させる。これにより、凹凸構造内でのエネルギーバランスが崩れることで、気泡は脱離する。本研究においては、気泡制御を基本としたメモリとしての基本動作を実証し、その発展性を検証する。本年度では、溶液の表面エネルギーを変えることで、微小凹凸構造での気泡の吸着・吸着現象を確認できた。また、環境制御型電子顕微鏡を用いて、微小濡れ特性を解析した。今後、デバイス動作のために多くの解決すべき課題が存在する。そこで、今年度中は、デバイス実現の可能性を検証することを重要視し、デバイス動作の高精度化や安定性は次年度に位置付けている。本研究は、微小凹凸構造における個々の気泡の制御に関するものであり、これまでに研究例がなく、斬新な成果が期待できる。本研究期間には、原著論文10報、国際学会発表15件、国内学会発表21件の成果発表を行った。
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