本研究では、超短パルス高強度レーザーにより誘起される光電界電離過程を利用して、卓上型の中心波長126nmの真空紫外アルゴンエキシマレーザーの開発を行った。真空紫外アルゴンエキシマレーザーはこれまでは大型の励起装置を必要としており、レーザーの短波長性を利用する応用展開のためにも卓上型動作は必要不可欠のものである。この超短パルス高強度レーザーの高い光電界を利用することにより、電子密度10^<17>cm^<-3>程度、電子温度5eV程度の低温、高密度プラズマを生成することが可能で、このようなプラズマ状態は三体衝突過程が生成の主過程となるアルゴンエキシマにとっては理想的な初期条件となる。またこのようなプラズマを中空光学ファイバー内で生成することにより、励起レーザーの集光強度を維持しつつ、レーザーの集光長(レイリー長)で制限されることのない長尺プラズマ(〜30cm)を実現した。 加えて、波長126nmにおける新たに開発された反射率70%程度の誘電体多層膜鏡を用いることにより、波長126nm光を中空ファイバー中で折返し、鏡のあるときと無いときの光強度を比較した。この結果、動作圧力10気圧において約50倍の光増幅を観測することに初めて成功した。この結果より、小信号利得係数として0.16cm^<-1>というこれまで得られた値としては最も高い値を得た。波長126nmの一重項誘導放出断面積の値(〜10^<17>cm^2)より、アルゴンエキシマの一重項密度は約10^<16>cm^<-3>のオーダーであると見積もられ、初期電子密度の1/10程度となることがわかった。この励起方式による投入励起エネルギー密度に対してはほぼ上限を与える高密度のエキシマ分子を生成していることが判明した。 本研究の結果より、アルゴンエキシマレーザーに対して光電界電離方式を用いる妥当性が示された。今後は共振器を構成することにより、kHz程度の高繰り返しが可能で卓上型のアルゴンエキシマレーザーの実現に向けてさらに研究を進めていく予定である。
|