2年間にわたり超短パルス高強度レーザーにより誘起される光電界電離過程を利用して、卓上型の中心波長126nmの真空紫外アルゴンエキシマレーザーに関する研究を行った。その研究過程で新たに判明した事実は以下のとおりである。 ・高強度レーザー生成プラズマは初期状態から低温(5eV以下)であることが、アルゴンエキシマ生成キネティクスシミュレーションにより明らかとなった。 ・長さ30cm程度の中空ファイバー内にアルゴンプラズマを生成することによりレーザーのレイリー長(数ミリメートル)を大きく超える長尺プラズマを生成することが可能となった。 ・波長126nmのアルゴンエキシマ発光のアルゴン圧依存性より高気圧中でのアルゴンエキシマの主生成過程はこれまで知られている三体衝突過程であることを確認した。 ・高強度レーザー生成プラズマを初期条件とするアルゴンエキシマ発光解析シミュレーション手法を開発し、実験結果と比較することでこの妥当性について検証した。 ・波長126nmで高い反射率を持つ誘電体多層膜鏡を用いてアルゴンエキシマ発光をフィードバックしプラズマ中に再入射させることにより1パスで0.16cm^<-1>という小信号利得係数を観測した。 ・中空ファイバーを用いずにレイリー長程度でプラズマ生成した場合にも発光の増幅が観測された。特に圧力が8気圧以上で増幅率の著しい増大を観測した。プラズマ長が短くなった分高強度レーザーの励起エネルギー密度があがり、その結果小信号利得係数も4cm^<-1>程度と非常に高い値が得られた。この値の妥当性ならびに8気圧以上での著しい増幅率の増大に関しては現在検討中である。 ・レーザー発振を目指し共振器鏡を組んだが、出力鏡の透過特性等により制限されレーザー発振を観測するまでには至らなかった。 これらの成果により、卓上型のアルゴンエキシマレーザーの実現に関しては高強度レーザーの光電界電離方式を用いることの妥当性が示された。共振器の光学的特性によりレーザー発振には至らなかったが、非常に強い増幅された自然放出光を観測するに至った。
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