本研究の目的はこれまでにない電波のエネルギー利用により、コードレスで電気エネルギーを利用できる「無線電力空間」の最適設計及び基礎実験を行うことである。本年度は無線電力空間の最適化設計を試作を含めて行う。無線電力空間の様々な設計条件を検討し、昨年度は設計条件に基づき提示議論を解決するため、調査とシステムの最適化設計を行った。 今年度はその設計に基づき、人体への安全基準である1mW/cm^2以下の電力密度で高効率動作する受電整流素子レクテナの開発を行った。レクテナパラメータを詳細に検討しながら最適化を行い、1mW入力での効率向上を図った。その結果、1mWマイクロ波入力でほぼ50%の効率を持つレクテナの開発に成功した。このレクテナはプリントダイポールと低域通過フィルター、整流回路で構成され、それぞれ200Ωのコプレナー線路を用いている。このレクテナは無線電力空間以外にも現在世界中で研究が進んでいるRF-IDに応用することができる。さらにこのレクテナアレイを用いてウエアラブルな「はっぴレクテナ」を開発した。無線電力空間で十分な電力を得るためには、電力密度を人体への安全基準より強くすることができない以上、レクテナ面積で稼ぐほかない。その上で「携帯性」「利便性」を追求した結果、人体で一番面積が稼げる服の背中にレクテナアレイを装着することとした。はっぴレクテナははっぴの背中部分にデュアル偏波72素子レクテナアレイが3枚装着されており、無線電力空間内で百mW程度の直流を得ることができる。
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