本研究は、義手・義足ならびにマニピュレータ用感覚器として、二次元に配置した感温および感圧センサによる対象物の温度および形状を検出する機能をもつとともに、感温センサを発熱体として利用し、人肌のぬくもりを有する新しい触覚センサを構築することを目的とする。 本年度は、触覚センサ用複合素子の要素技術として、荷重検知構造体の作製および定量動作試験を行った。厚さ50μmのステンレス板および直径400μmの穴を開けた厚さ300μmのステンレス板を貼り合わせたものを基板とし、表面に石英からなる絶縁薄膜を形成した後、受感部長さ300μmおよび幅10μmの感圧センサ薄膜を形成した。さらに、特性評価を行うための電極薄膜を形成した後、約4mm角のマイクロダイアフラム素子形状に加工した。表面保護層として厚さ約1mmのゴム板をのせたマイクロダイアフラム素子において、荷重を印加した結果、荷重に対する抵抗値の変化は単調な増加を示し、100gで約0.3%の抵抗変化率が得られた。また、指先で軽く触れた場合においても十分検出可能な抵抗値の変化を見ることができた。 二次元に配置した触覚センサにおいて、発熱駆動させながら同時にセンシングを可能とする電子回路構築の要素技術として、マトリクス状センサにおける電圧変化を正確に検出する回路に関する試作を行った。本年度は、駆動電圧を与える行および電圧変化を出力する列の回路配線を高速に切り替えるためのマルチプレクサIC、それらの切替制御と電圧変化の検出を行うマイコンからなる回路を設計し、すべてのセンサにおける微小な電圧変化をパソコン上に正しく表示する信号処理回路を試作した。本試作回路および試料台冷却ユニットを用いてセンサ素子の特性評価を行うとともに、薄膜形状および基板材料の最適化に関する実験を進める。
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