研究概要 |
複数の異なる集団からなる進化ハイパーゲームの動的挙動を表すレプリケータダイナミクスを平成16年度に提案したが,このモデルにおいては,解釈関数は時間的に変化しないと仮定していた.しかし,実際のシステムでは,ゲームを繰り返すうちに,解釈関数を変化させることでより多くの利得を得ようとする場合がある.例えば,法律の適用範囲を現状に合わせて改正するような場合がこの状況に相当する.このようは利得に応じて解釈関数が変化するような進化ハイパーゲームを考え,解釈関数の変化を事象とみなすことで,その挙動をハイブリッドオートマトンでモデル化できることを示した.このモデルをサッカーフーリガンの例に応用した.利得行列の与え方によって,解釈関数の切り替えの仕方が異なることを示した.特に,切り替えによって,徐々に周期が長くなり,ヘテロクリニック軌道に漸近する挙動がシミュレーションでは観測された. 各エージェントが利得をより多く得ようと行動することで結果的に利得が減るような現象を社会ジレンマという.社会ジレンマを解消する方法として,政府というエージェントを導入し,政府が各エージェントから一定の割合で利得を回収し,それを各エージェントに再配分することで,社会ジレンマを解消できるかどうかを検討した.このような状況がレプリケータ・ミューテータダイナミクスによって記述できることを示した.目標とする平衡点がニュートラルな進化的安定戦略である場合には,少しの回収で安定化が出来ることを明らかにした.平衡点が不安定な場合にはある程度の割合で利得の回収すれば安定化できることがわかった.また,回収率を増やすにつれて,サドルノード分岐を発生しうることがわかり,このとき,社会ジレンマが突然解消され,目標の平衡点へ向かうことを示した.
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