本研究は、打込み時から凝結硬化時にコンクリートに生じる沈下ひび割れを治癒するため、膨張コンクリートを基本にして膨張作用の持続期間を遅延剤や超遅延剤等により延長することにより、どのレベルまでがコンクリートの自己治癒により補修されるかを定量的に評価することを試みた。 まず、膨張材を2種類とその使用量を3種類それぞれ用いて、膨張コンクリートの膨張量の発現性状を試験した。試験体は、JIS A 6202(コンクリート用膨張材)附属書2(参考)に規定されているA法一軸拘束器具を用いた。 その後、沈下ひび割れの発生を模擬した試験体を用いて、沈下ひび割れへの自己治癒効果を実験した。試験体は、幅が15cm、高さが20cm、長さが75cmで、試験体中央にかぶりを3種類に変化させて直上に沈下ひび割れを発生させるようにD13鉄筋を配置したものである。ひび割れの発生およびその後の自己治癒の効果は、打込み直後から鉄筋に貼付したひずみゲージにより追跡した。材齢28日に実施した曲げ強度試験は、試験体の上下を反転させて、沈下ひび割れが引張側となるように設置して行ない、曲げひび割れ発生応力度により自己治癒の効果を定量的に判定した。 以上の結果、膨張材を用いた膨張コンクリートを用いると、コンクリートに導入されるケミカルプレストレスの量以上に、沈下ひび割れを生じさせたはりの曲げひび割れ発生応力度が増加していることを確かめた。このような増加は、沈下ひび割れを自己治癒していると判定できるものである。そして、その増加分を自己治癒応力度と称することにした。
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