昨年度の研究により、界面活性剤、特に直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸にコンクリートを劣化される傾向が見られた。しかし、これは強酸のため、酸による劣化の可能性が考えられたことから、本年度は、酸の影響を受けない、中性および弱アルカリ性の家庭用洗剤(界面活性剤)を用いて、コンクリートの劣化に及ぼす界面活性剤の影響を調べる実験を行った。 使用した界面活性剤は、中性A(アルキルグルコシド)、中性B(脂肪酸アルミドプロピルエタン)、弱アルカリ性A(アルキルベンゼンスルホル酸)、弱アルカリ性B(高級アルコール)、ウインドウオッシャー液(ポリオキシエチレン硫酸エステル塩)の5種種類。水セメント比60%、圧縮強度30N/mm2、空気量4.2%のコンクリートにより角柱供試体(100x100x400mm)を作成し、それを厚さ20mmにスライスした。 各種界面活性剤1%溶液に浸せきさせたコンクリート片のうち、弱アルカリA液に浸せきしたコンクリート表面には白い析出物が付着した。この析出物はコンクリートの骨材部分には付着せず、モルタル部分にのみ付着していた。この析出物の分析を現在継続中であり、次年度結果を明らかにできる予定である。 スライスしたコンクリート片の表面上の4端辺にシリコンにより堤をつくりプール状にし、その中に5種類の表面活性剤を1%濃度(溶剤として3%のNaClを用いた)の溶液にして入れて、汎用大型冷蔵庫と20℃の恒温恒室を利用して凍結融解試験を行った。その結果、ウインドウオッシャー液を除いて、他の界面活性剤を用いた場合の総スケーリング量はNaCl(3%)水溶液単独の場合よりも減少することが分かった。ウインドウオッシャー液の場合はNaCl単独の場合よりもスケーリング量が1.1倍に増加することが分かった。そこでウインドウオッシャー液の濃度を0.1%から3%の範囲で変えてコンクリートの劣化量を調べた結果、0.1%から1%の範囲で最も劣化することが明らかになった。そこでさらにその劣化する濃度の範囲を特定するために0.05%から1%間での間で実験を行った結果、最も凍結融解によりコンクリートのスケーリング量が極大となるのはウインドウオッシャー液の濃度が0.3%であることを明らかにした。その時のスケーリング量はNaCl(3%)水溶液単独の場合の1.53倍であった。このようにウインドウオッシャー液の濃度がかなり低くても塩分と混ざってコンクリート表面に存在すると、凍結融解により塩分単独の場合よりも大きく劣化が進行することを明らかにできたことは重要な知見であると言える。このような現象が生じた原因については現在検討中であるが、現在のところ、この濃度0.3%程度で最もコンクリートと溶液との界面が活性化され水がコンクリート内部に滲透しやすくなったためではないかと考えている。
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