研究概要 |
山岳トンネルの1次支保やシールドセグメントには地山からの土圧を受けて大きな圧縮力が発生する.多くの場合,部材の厚さが十分にあり,圧縮力による座屈破壊に対しては安全とされることから,その確認や照査はされない.しかし実際には,膨張性地山におけるトンネルにおいて支保や覆工が座屈に近い破壊をしている例も見られる.これまでトンネル構造の座屈についてはあまり検討されていなかったが,上記のようにトンネルアーチの部材厚さに対して大きな荷重が作用する場合には,当然,それに対する安全性の評価が必要となる.ここでは特に,コルゲートカルバートトンネルを想定し,座屈解析を実施した.この部分については土木学会論文集に発表した.そこで次に,トンネル支保工模型を用いた座屈検証実験を実施し,周辺地盤により安定化するトンネル支保工のような構造物であっても座屈を生じ得るか検討するとともに,数値解析を行うことで,座屈解析手法の実現象への適用性を検証した.また,座屈前後の支保工模型の挙動について,実験結果及び解析結果について考察した.部材厚が0.1mm,形状が円形の場合には,周辺地盤の条件に関わらず天端からの土被り高さH=230〜490mmで支保工模型は座屈した.この結果から,トンネルのように周辺地盤により安定化している構造物であっても,部材厚に対して作用する荷重が大きい場合には,座屈し得ることが確認された.ただし,座屈時の土被り高さはばらつきの大きい結果となったが,これは周辺地盤から必ずしも一様な地盤反力が得られていないためと考えられる.すなわち,座屈挙動のような不安定現象では地盤条件のわずかな違いが実験結果に大きく影響すると考えられる.また,座屈前には支保工模型はほとんど変形していないことが確認され,一般的に安定と考えられてきた内空変位の生じていない支保工であっても,座屈する可能性があり,注意を要するといえることがわかった.
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