研究概要 |
水処理における凝集処理では,水中の懸濁質やバクテリアなどは,アルミニウムの加水分解過程で生成する水酸化ポリマーによって不安定化し凝集・粗大化される本研究ではアルミニウム凝集剤の加水分解過程で生成されるアルミニウムポリマーに非可逆に吸着することによってウイルスが不活化されている可能性について検討した.凝集剤添加後のウイルスの感染性を,Qβ,MS2,T4,and P1の4種類のファージとPAC,硫酸アルミニウム,塩化アルミニウム,水道用凝集剤液体硫酸バンドを使って調べた.凝集剤添加後の感染性ウイルス濃度は生成したフロックをビーフエキスアルカリ溶液で溶解した後に計測した.感染性ウイルス濃度はフロック溶解時間5秒後は,初期値まで回復せず,さらに5時間まで延長しても添加時の初期値までは回復しなかった.ウイルスの未回収は,水酸化アルミニウムポリマーに対するウイルスの非可逆的吸着であり,これは一つの不活化形態と考えられた.検討したすべてのアルミニウム凝集剤全てにこの非可逆的吸着作用によるウイルスの感染性の喪失すなわち不活化が見られたが,とくにポリ塩化アルミニウム(予め加水分解が進み水酸化アルミニウムポリマーを多く含む)では不活化による感染性ウイルス濃度の減少が著しかった.このウイルスの不活化は純水にウイルスを添加した系では著しかったが,通常の河川水中では不活化は抑制された.この理由は水中の自然由来有機物によるものと思われる.すなわち,自然由来有機物と反応して生成した水酸化アルミニウムポリマーは非可逆的吸着作用が弱いものと推論された.
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