研究概要 |
琵琶湖沿岸域では、ヨシ植栽による沿岸環境の修復事業が進められてきたが、修復は容易ではなく、ヨシ植栽後の評価事例も少ない。本研究では、琵琶湖沿岸の自生・植栽ヨシ群落において、植物社会学的調査法による植生調査および主要31種を対象にした各被度(+,1〜5)別の植物乾燥重量、含有成分率(C,N,P,金属類等)分析を実施し、両調査結果を用いて評価法の検討を行った。そして、群落内の植生を考慮した自然再生評価手法を提案し、琵琶湖沿岸におけるヨシ植栽事例(湖北町、近江八幡牧、木浜、小野等)と自生ヨシ群落(近江八幡長命寺等)の植生を比較し、再生状況の定量評価を試みた。その結果、以下の主要な知見を得た。 1)琵琶湖沿岸のヨシ群落は、植物種構成の特徴により、(1)チクゴスズメノヒエが優占した群落、(2)ヨシ以外の他植物が生育し多様な植生の群落、(3)ヨシとその他植物の割合が均等で多様性に富んだ群落、(4)ヨシとその他植物が生育し多様性のある群落、(5)群落内植物の大部分をヨシが占め他植物の進入があまり見られない群落に分けることができた。 2)植物種別の植生被度と地上部現存量との関係および含有成分率を示し、それらの関係を用いた植物群落を定量評価するためのフローを提案した。 3)琵琶湖沿岸の自生ヨシ群落を植生の異なる3つのタイプに分類し、植栽ヨシ群落が、再生目標とする群落のどの評価指標にどの程度近似しているかを評価できた。 4)湖北町のヨシ群落の植物種構成がもっとも自生群落に近似し、木浜、山寺川河口北、今津、近江八幡白鳥川北,牧のヨシ植栽地の植生が、自生群落と著しくかけ離れていることを、近似度により定量評価した。 今後は、各植物の季節別、地域別の成分含有率のデータを拡充し、より精度の高い評価手法の確立を目指す予定である。
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