本研究は、産業廃棄物や廃コンクリートから発生する微粉末をコンクリート用材料に用いる際の流動性制御方法について検討するものであり、1μm以下のナノサイズ微粒子の凝集分散を制御することにより、粉体の最密充填化が可能な手法を開発しようとするものである。現在までに得られている結果および今後の課題は以下の通りである。 (1)粒子の粒度分布が、粒子の充填性状に及ぼす影響について検討し、フラクタル次元と充填率との間に高い相関関係があることを示した。しかし、モデル実験で用いた粒子は10μm以上の粗大粒子であり、ナノレベル粒子までフラクタル次元と充填率の関係が適用できるかについては来年度検討することにした。なお、分散剤などによりナノレベル粒子まで完全に分散でき、かつ粒子の粒度分布のフラクタル次元と粒子の充填率との間に高い相関性が確立されたときには、容易に最適粒度分布を求める簡易な計算ソフトを作成した。 (2)微粒子の凝集分散に関して、2粒子間の相互作用エネルギーを計算して検討を行った。この際、微粒子が粗大粒子に付着すると、粗大粒子と微粒子が凝集しづらくなることを明らかにし、ナノサイズ粒子のよる新たな流動性改善機構を提案した。また、粒子に吸着した分散剤ポリマーによる立体反発力の効果について、粒子への吸着力とポリマーの伸展力の相互作用から検討し、吸着力が大きなポリマーほど早く効果が出現するが、架橋効果によってスランプロスを生じる危険性も増大することを明らかにした。 (3)廃コンクリートを湿式粉砕ミルで摩砕した時の、微粒子の粒度分布と化学成分について検討を行った。あまり摩際しなければ、微粉部分の化学組成はセメントに由来したものになることが判明し、今後は液相中での無機イオンの溶出を検討する予定である。
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