前年度までの検討を踏まえ実験と境界要素法による解析の両面から以下を明らかにした。 音源位置及び受音位置と得られる吸音特性との関係を検討した。測定対象は、大きさ910mm×1820mm、厚さ50mmのグラスウールである。音源は、固定音源(スピーカ4台から無相関ピンクノイズを出力)と移動音源(掃除機)の2種、固定音源はスピーカ位置を4種設定、移動音源は直線的往復運動と室全体の回転運動の2種の移動方式を設定した。受音位置を試料の1/4上にほぼ均等に位置する11点とし実測した。その結果、固定音源のスピーカ位置の相違が測定吸音率の概形に及ぼす影響は小さく、細かなピーク・ディップの出現周波数をわずかに変化させるのみ、と判断された。移動音源については、直線運動に比べより長い移動距離で平均操作がなされる回転運動の方がピーク・ディップの少ない滑らかな吸音特性を与えることが明らかとなった。 次に、実験で確認された現象の発生メカニズムを境界要素法で検討した。剛平面上に敷設した試料(90mm×90mm、50mm厚グラスウール)へ平面波が入射する解析モデルを設定し、p-p法並びにP-u法の2種のEA-Noise法をシミュレートした。試料に対する平面波の入射角と、試料近傍受音点における音圧や粒子速度、さらにはインピーダンスや吸音率の関連を詳細に検討した結果、500Hz付近における吸音率の上昇は試料境界で発生する墳界波と直接波の干渉に起因することを明らかにした。また、入射角に関する平均操作で、その影響をキャンセル可能とする基礎資料を得た。さらに、p-p法とp-u法の比較を行ったところ、試料近傍の同一点における音圧と粒子速度を利用するp-u法の方が、より安定した吸音特性を与えると判断した。 以上の結果を日本建築学会大会や日本音響学会研究発表会他で公表した。
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