研究概要 |
情報端末機器の利用を前提として都市内移動者の空間経験を豊かにするための都市デザイン手法を導くことが必要であると考え,本研究では歩行者ナビゲーションを利用する経路探索者が形成する認知地図の特徴を明らかにすることを目的とし,外的ナビゲーションに従う探索者(携帯電話ナビゲーション歩行者)と内的ナビゲーションに従う探索者(紙面地図記憶探索者),さらに第3者に誘導される誘導歩行者を対象として実験を行い,属性の違いによる都市空間認知と都市空間要素に関する記憶の差異を分析・考察した. 具体的には,本研究のために構築した階層的仮説に基づき,探索時に視認できる特徴を有した都市空間要素の数および探索者に与える地図上の要素を情報量と定義し,外的ナビゲーションに従う探索者,内的ナビゲーションに従う探索者,および「第3者」に誘導される誘導歩行者という情報獲得・利用の違う属性の被験者に,情報量の異なる2対象地を歩行させる.歩行後に,空間認知および都市要素に関する記憶を問う空間認知・記憶想起実験を行い,被験者が形成した空間イメージに関する情報を都市要素の画像の記憶,地図上の布置,認知距離・方向というデータとして得た. 認知距離・方向,都市要素の回答の正誤による統計分析,記憶要素の布置された地図(回答分布地図)および当研究者等が考案した記憶要素数と時間経過の関係を示した記憶グラフを用いた定性分析を行い,具体的な差異を検討した.その結果,定性的に内的ナビゲーションに従う探索者の方が都市を空間的に把握していることが分かったが,その違いを定量的に示すためには方法論に変更が必要であることが分かった.
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