研究概要 |
本研究は、高齢者福祉における在宅か施設かの二者択一ではない、第3の選択肢として「サポートトセンター(地域ケアサービスの拠点)」を構想し、地域ケアの成立要件を検討するものである。前提とする構想は、住居とケアサービスが一体で提供される「施設」という枠組みを解体し、施設ケアサービスを地域に開くことやその逆も想定して既存のケアサービス資源を有効活用した、施設ケアと同じ24時間の地域ケアサービスにより、高齢者が在宅で住み続けられる仕組みである。 こうした仕組みの成立には、制度や経済あるいは高齢者の心理的問題等の他、ケアサービスの提供者が移動する時間、すなわち高齢者の居住地点とケアサービスの拠点間の「(時間)距離」が問題となるので、本研究は、特にこの「距離」について、地理情報システム(GIS)を用いたシミュレーションにより、解析を試みるものである。 本年度は,昨年度末に実施した拠点過疎地域における訪問介護・看護拠点のサービス提供実態について分析・考察を行った。調査対象は,「カバー拠点数1(想定半径10km)のメッシュ」から選択した13の拠点で,その設立主体は,社会福祉協議会6,社会福祉法人(社協以外)3,NPOが3,である。また人口減少が進む過疎地域の中から6町村を選び,行政の対応などについて実態を把握した。それらの調査で得られた結果は,以下の通りである。 (1)拠点過疎地域の抱える問題について 生活が車に依存していること,地理的には山間部など移動に関して厳しい条件であること,等々ヘルパーにとってもアクセスが難しい状況があり,またサービス利用者が集まらないなどの問題を抱えている。 (2)地域と結びついた高齢者の姿について 職住が近接しており,また親戚が近隣に住んでいること,食べ物も自給自足で賄えること,地域の人間による助け合いが依然存在していること,などそれぞれの土地ならではの文化が生きている。 (3)サービス提供側の工夫について 移動コストと利用者の散在に対して,サービス提供圏を限定し拠点間の縄張りを明確にしていること,直行直帰の職員の採用や,地区内でのヘルパー養成を行うなどの工夫が見られた。
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