研究概要 |
阪神・淡路大震災では、震災関連死を除く死者約5,500名のうち、家屋の倒壊、家具の転倒等による圧死、窒息死等が9割近くを占めた。特に新しい耐震基準適用以前の古い木造家屋に大きな被害が生じた。こうした教訓に基き、阪神・淡路大震災以降、大地震を経験した阪神地域、大地震が想定されている首都圏、東海地域などを中心とした多くの地方公共団体が、老朽木造住宅の耐震診断、耐震改修等への補助や融資制度を創設し、住宅耐震化の促進に努めているが、こうした補助制度も、利用者側のニーズや状況に十分適合したものとはなっていないため、各自治体が予め想定した申請数を大きく下回り、十分に活用されていないのが現状である。 こうした背景を踏まえ、本研究は、これまで供給者側の論理に基き構築され、そのため十分に活用されてこなかった国や地方公共団体による住宅耐震化支援のための制度について、マーケティング手法を導入することにより、需要者のニーズに合ったより効果的な制度の構築・普及を図るための方法論を椎立することを目的として行った。 木造住宅耐震化支援のための補助制度を先駆的に実施している自治体の一つである静岡県をケーススタディの対象地域とし、平成16年度は、まず静岡市を対象として、県・市の補助を活用し実際に耐震補強を実施した世帯に対しアンケート調査を行い、耐震補強実施者の世帯属性や実施理由を明らかにする事により、より効果的な制度設計、制度の普及・PR方法に関する有効な知見が得られた。次に、富士市を対象として、県・市の補助を活用し、専門家の耐震診断を受けた世帯に対しアンケート調査を行い、コンジョイント分析を用いて重要者の効用関数の推定を行うとともに、耐震補強未実施の理由、実施のための条件などを明らかにし、需要者のニーズに合ったより効果的な制度の構築・普及を図るための有効な知見を得た。
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