原子容器として機能する可能性をもつ近似結晶Zn17Sc3について、金属学的・結晶学的な実験研究を行った。 1.この金属間化合物の単相組成がZn85Sc15ではなく、Zn84.5Sc15.5であることが判明した。室温における粉末X線回折リートベルト法構造解析は、構造的な曖昧さを内部に持ちながら、それ自身は明確な原子位置をもつクラスターの存在を示した。 2.Zn84.5Sc15.5試料について、液体窒素から室温までの電気抵抗を測定したところ、130K付近に明確な折れ曲がりを検出した。これは、類似構造であるCd6Ybで報告されているものと同様な構造的相転移の存在を示唆している。すなわち、クラスター内部のZn原子の構造的フラストレーションと関連した規則化と予想される。また、電気抵抗の折れ曲がりの様子は、組成の微妙な違い(Zn濃度で0.5%)や熱処理に依存することを見いだした。この結果は、次年度に予定している低温におけるX線構造解析に有力な手がかりを与えている。 3.Scの組成を15.5at.%に保ったまま、ZnをFeまたはAgで置換することを試みたところ、FeおよびAgの固溶限界は、それぞれ3.5at.%と13at%であることを見いだした。これらの置換されたFeやAgの位置を決めること、優先置換の有無は、次年度の課題である。
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