研究概要 |
ナノ酸化物層(NOL)を挿入した-SPSV薄膜は約13からなる複雑な多層構造である。本研究代表者らはすでにNOLが反強磁性成分を含んでいることを報告した。本研究の目的はピン止め層であるNOLを介したCoFe層の面内磁化過程の解析である。そこでメスバウァー効果測定のため^<57>Fe(新規購入)をドープしたNOL部多層薄膜を以下の方法で作製し、膜構造と磁気特性の評価を行った。まずスパッタリング装置を用いてNOLを介したCoFe層のみの多層薄膜試料を作製した。このときRHEED観察によっての成長様式をその場観察し、エピタキシャル成長することを確認した。作製した試料の膜構造(結晶構造、格子定数など)をX線回折を使って評価した。また薄膜の磁気測定は既設の試料振動型磁力計(VSM)を用いて測定した。Fe組成の異なるCo_<90>Fe_<10>,Co_<70>Fe_<30>,Co_<50>Fe_<50>-NOL薄膜試料を作製した。 上述で作製した特定磁性層に内部転換電子メスバウァー効果(CEMS)の測定と解析を行った。得られたメスバウァースペクトルはFe多成分非線形の最小自乗法収束計算によるによるフィッティングにより解析した。Co_<90>Fe_<10>-NOLではNOLの常磁性成分のみが観測され、FeOもしくは微細なFe酸化物ができており、室温では常磁性であると考えられる。Co_<70>Fe_<30>-NOLではα-Fe_2O_3とα-(Fe-Cr)_2O_3と考えられる成分が観測された。これらの結果を基にスペキュラスピンバルブにおけるNOLの磁性とNOLを介した層間交換相互作用について考察した。
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