研究概要 |
本研究では髪の毛程度の太さのタングステン金属(タングステンファイバー)を用いてシリコン太陽電池の作製を目指している。この目的のために本年度は、平成16年度に設計した赤外ゴールドイメージ炉を製作し、ランプ加熱による気相化学堆積(Chemical Vapor Deposition, CVD)装置を用いて、ショトキー障壁型タングステンファイバー太陽電池のプロトタイプ試作を目指した。CVDの原料ガスとしては、He希釈1%モノメチルシラン(CH_3SiH_3)を用いた。この原料ガスをCVD装置中に圧力30-100Pa、流量0.5-1.0L/minにて導入し、装置中心部に設置した直径100ミクロンのタングステンファイバー近傍を800℃で20-40分間ランプ加熱することにより、ファイバー上に薄膜を形成した。得られた薄膜の表面モフォロジーおよび断面構造を2次電子顕微鏡で観察し、タングステンファイバー上に膜厚0.5-1.0ミクロンの薄膜が成長していることを確認した。さらに、X線光電子分光法による原子組成分析、透過および反射電子顕微鏡観察を行うことにより、得られた薄膜は多結晶3C-SiCであることを見出した。当初目標としたシリコン薄膜形成条件については、現在引き続き検討中であるが、SiCも応用上有望な半導体であり、本研究で得られた直径100ミクロンのタングステンファイバー上への膜厚ミクロンオーダーの結晶性SiC薄膜形成技法は、今後の発展が期待される重要な成果である。
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