研究概要 |
本研究では、スピン結晶場制御という概念に基づくダウンコンバージョン過程を利用した希土類イオンの量子カッティング(1光子吸収2光子発光)を発現するGdベース新規フッ化物、ケイ酸塩結晶中の希土類イオン間の交差緩和と共鳴エネルギー移動の2ステップエネルギー移動のダウンコンバージョンによる量子カッティングの動的挙動の解明と、2ステップエネルギー移動を経る2光子発光遷移のカスケード(段階遷移)誘導放出を利用した可視レーザー発振の可能性を探ることを目的とする。本年度は、Gdベース量子カッティング結晶の合成と真空紫外分光と量子カッティングの動的挙動の基礎的知見を得ることを目的とし、下記の成果を得た。 1.2種あるいは3種のLn(I)^<3+>-Gd^<3+>-Ln(II)^<3+>(Ln^<3+>=Eu^<3+>,Er^<3+>,Tb^<3+>)希土類イオン結合系で、スピン状態を含む結晶場を制御して、交差緩和と格子間共鳴エネルギー移動を経る2ステップのダウンコンバージョンによる量子カッティング発現の調べるために、ワイドバンドギャップのGd^<3+>副格子をもつ異なる新規フッ化物KLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF_<10>:Eu^<3+>,CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>結晶を合成した。KLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF_<10>:Eu^<3+>では、4f-4fの真空紫励起で最大140〜165%の交差緩和効率をもつ量子カッティングを見出すとともに、量子カッティング効率のEu^<3+>濃度依存を明らかにした。CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>では、Er^<3+>,Tb^<3+>の真空紫外域の4f^<n-1>5d^1のスピン許容と禁制の励起準位を明らかにし、Er^<3+>の4f^<11>-4f^<10>5d^1スピン許容の真空紫外励起による120%のダウンコンバージョン効率をもつ量子カッティングを新たに見出すとともに、そのEr^<3+>とTb^<3+>の濃度比依存を一部明らかにした。 2.量子カッティングの動的挙動の解明研究の一つの試みとして、KLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF_<10>:Eu^<3+>において時間分解蛍光寿命測定より、発光の立ち上がり、減衰と時間スペクトルを測定し、交差緩和および格子間の共鳴エネルギー移動の動的挙動を明らかにし、量子カッティング過程はEu^<3+>-Gd^<3+>間の交差緩和とGd^<3+>-Gd^<3+>の副格子間の共鳴エネルギー移動の2ステップエネルギー移動過程で起こることを実証した。 これらの結果から、Eu^<3+>の4f-4f励起での量子カッティングによるカスケード誘導放出過程の実現の原理的な可能性を見出し、その基本的な問題点を若干考察した。
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