2年目の課題であるニオブ酸カリウム(KN)単結晶中への数百nmのナノドメイン構造を導入するためのナノドメイン導入システムを開発した。このためBT結晶よりも高温である300℃以上まで使用できる温度可変ステージに変更し、更に顕微鏡下でドメイン構造を観察しながら電界印加を行える装置を開発した。また、旭テクノグラス(株)より大型のKN単結晶を購入し、背面反射ラウエ法による方位出し、切断、研磨を行うことで必要となる31振動子を作製した。これらにおいて、BT単結晶と同様に最も高い圧電特性を得るための最適なドメイン構造をシミュレーションにより決定した。そこで、230℃付近にある正方晶と斜方晶との相転移を利用し、目的とするドメイン構造の導入を試みたが、パターン通りのドメイン構造を導入することができなかった。この原因を検討した結果、電界を一定に印加したパターニング電極を用いて温度を下げていった場合の相転移では、電界による影響よりも温度による相転移の影響が大きいため、パターン通りのドメイン構造を導入できないことが明らかとなった。また、温度を一定にし、パターニング電極を用いた電界印加においては20kV/cmを超える大きな電界が必要となり、更にこの電界ではリーク電流が大きくなるため分極できないこともわかった。このようにパターン通りの均一なドメイン構造をKN結晶中に導入できなかったものの、ランダムなドメイン構造ならば自由に導入することができた。この場合でもBT単結晶と同様にドメインサイズの減少に伴い、圧電特性が急激に増大する現象を確認できた。そこで現在70℃付近でパターン通りのドメイン構造を導入するための条件の最適化を行っている。
|