酸化亜鉛(ZnO)は代表的な多機能性材料のひとつである。最近では、特殊な形態と優れた結晶性を有するZnOから室温での紫外レーザー発振が報じられており、光機能材料として脚光を浴びている。本申請者らは線材状のZnOセラミックスを通電加熱した場合に、その表面に様々な形態を有するZnO結晶が成長する現象を見出し、本現象を利用した新規なZnO結晶作製法を通電加熱法と名づけた。これまでに、通電加熱時における結晶成長の条件(電流値、雰囲気、原料となる線材の相対密度等)と結晶形態及び発光特性との関連を調査してきた。 本年度は、Au触媒を担持したZnOセラミックスを通電加熱することにより、Au表面に成長するZnO結晶の形態と発光特性に与える雰囲気と通電時間の影響について調査を行った。空気中においてAuを担持したZnO線材を通電加熱した場合、通電時間1分では先端に球状のAuを有する結晶で構成された櫛状結晶が成長した。通電時間5〜10分では、樹枝状結晶が数多く成長した。Ar中、通電時間1分の条件では、ZnO結晶は確認されなかった。通電時間5〜10分では、六角錐状結晶が成長することがわかった。特に通電時間10分において、六角錐状結晶の先端から直径が数十nmのウィスカが結晶底面に対して垂直に成長した。得られた結晶について発光特性を評価した結果、空気中で成長した結晶からZnOの格子欠陥に起因する緑色発光(2.2eV)とZnOのバンド端付近の紫外発光(3.2eV)が観測された。空気中では、通電時間が短いほど緑色発光に対する紫外発光強度が増大する傾向が得られた。Ar中では、通電時間5分で成長した結晶から赤色発光(1.7eV)が観測された。通電時間10分で成長した結晶は、紫外発光(3.2eV)が支配的であった。以上の結果より、通電時の雰囲気や通電時間を制御することによって、結晶の形態および発光特性の制御が可能であることがわかった。 また、通電加熱したZnOセラミックスにSi基板を近接させることにより、基板上にZnOウィスカを成長させることを試みた。低温で核となる結晶を生成させた後に、高温にて結晶成長を行うという二段階成長により、Si基板上へZnOウィスカを成長させることに成功した。基板温度が成長するZnO結晶の発光特性に与える影響を調査した結果、基板温度400℃で核を生成させ、800℃にて結晶成長を行うことにより、Si基板上へ紫外発光(3.2eV)のみを示すZnO結晶を成長させることに成功した。
|