コンニャク石の曲がる性質はその微構造にあり、数百ミクロンの石英粒子とその周りの空隙率10%程度のクラックがジグソーパズルのように3次元的に絡み合っているために現れる。従って、セラミックスの粒と粒界をうまく制御してやれば、コンニャク石と同じように曲がる性質が現れると考えられる。本研究ではその一つの方法として熱膨張係数の異なる二種類の物質を複合焼結し、冷却過程において界面に応力を発生させ、クラックを導入することにより人工的なコンニャク石を作製することを行った。原料は、金属に匹敵する25×10^<-6>/℃の大きな熱膨張係数をもつリューサイト(KAlSiO_4)とほとんど熱膨張係数がゼロのリン酸ジルコニウムカリウム(KZr_2(PO_4)_3)を用い、先ず、原料合成を行った。それぞれ単一相セラミックスの作製について以前明らかにした焼結条件を参考に、複合実験としてまず、リューサイトとリン酸ジルコニウムカリウムのどちらか一方を、コンニャク石と同様な粒径(数百ミクロン)のものに高温の条件(1300℃、Li_2CO_3 or MgO添加)で焼結し、次に、もう一方を粉体のままマトリックスとして混合し、より低温の条件(1200℃、Na_2CO_3 or MgO添加)で焼結した。これにより、元の粒子の変形を防ぎ、冷却時にこれら粒子と低温で焼結したマトリックスの界面間に熱応力を発生させ、クラックを導入することを試みた。両者の体積比や粒径などについて変化させ、えられた試料について、微構造観察、強度試験等を行った。その結果、一部試料において、コンニャク石と同様なクラックが生成し、強度は低かったが、コンニャク石類似の応力-歪曲線がえられた。
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