ケイ酸塩系ではナノ・マイクロ領域の分相構造を有するガラスを作製でき、さらに延伸操作により分相組織を伸長させることも可能である。このような分相組織を持つガラス材料を結晶化させることにより、超微粒子が配列したナノワイヤーアレイが実現できると考えられる。この材料をセンサに用いれば、ガス透過性を維持したまま半導体の微小粒径化による高感度・高速応答性と、ガラスの易成形性による小型化が実現できると考えられる。 そこで本研究では、酸化物半導体超微粒子からなるナノワイヤーアレイ材料を作製し、その電気伝導特性およびセンサ特性を評価することを目的とした。昨年度のCeO_2-Al_2O_3-SiO_2系に引き続いて、本年度は安定不混和領域が確認されているTiO_2-Al_2O_3-SiO_2系において、溶融・延伸・急冷プロセスにより水素検知用のワイヤセンサの作製を行った。またTiO_2の光触媒作用を利用した水素吸蔵・触媒燃焼作用を持つ貴金属(Pd)微粒子の担持を行った。ワイヤの電気伝導性・水素センサ特性および貴金属担持効果を評価し、酸化物半導体超微粒子ナノワイヤーアレイ材料の作製の可能性の検討を行った。 その結果、作製した溶融・急冷試料では、分相を起源とした針状組織のTiO_2結晶相(Anatase)の析出が認められた。大気中にて試料の電気抵抗を測定したところ、ワイヤ試料は昨年度のCeO_2系と同様に半導体特性を示すことが分かった。また、センサ特性の調査として、空気希釈水素・空気を交互に流通させ、異なる水素濃度下での電気抵抗の測定を行ったところ、水素濃度4vol%以上では試料の抵抗値変化が確認できた。またPdを担持することにより、水素流通・濃度変化に対する抵抗変化の安定性が若干向上することがわかった。今後、センサの安定性向上のために分相組織・貴金属担持量の最適化を図る必要があると考えられる。
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