研究概要 |
申請者は最近、1000℃以上の高いキュリー温度を有し400℃程度にfcc/hcp変態を持つCo系合金に着目し、そのマルテンサイト変態挙動を調査したところ、簡易的な曲げ試験で2%の表面歪に対し、約80%の形状回復が得られることを見出した。この合金のキュリー温度は約800℃、マルテンサイト逆変態温度は約200℃であり、形状回復も下図に示すようにこの逆変態に起因して高温で生じていることを確認した。そこで、本研究ではCo-Alを始めとしたCo-X (X:Ni,Fe,Ga,Si,Ge)系におけるfcc/hcpマルテンサイト変態について、合金元素や熱処理の効果を詳細に研究し、新規高温形状記憶合金としての可能性を明確にする。平成16年度に得られた結果は以下の通り。 1.計算状態図の手法を利用して、Co-X (X:Ni,Fe,Ga,Si,Ge)各合金系におけるfcc/hcp平衡の等自由エネルギー温度T_0を計算し、Ms温度を予想した。その上で、適正な合金組成および熱処理条件を明確にした。 2.高周波溶解炉にて合金を作製し、fcc-Co単相域から焼き入れることによりマルテンサイト変態させ、その組織を電子顕微鏡により観察した。その結果、良好な形状記憶特性を示したCo-Al合金においては、室温においても母相であるfcc相がhcpマルテンサイト相に混在している事が明確になった。 3.示差走査熱量計(DSC)を用いて、各Co合金におけるfcc/hcpマルテンサイト変態温度および逆変態温度を決定した。また、曲げ試験や引張試験を用いてマルテンサイト変態に起因する形状記憶特性を評価した。
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