いわゆるナノグラニュラー磁性体薄膜の磁気特性は、非磁性絶縁体によって分離された各ナノメータオーダー磁性体金属粒子が近接する磁性体粒子と三次元的にランダムに相互作用しているが、絶縁層によって分離された単一層のナノグラニュラー磁性体粒子を絶縁層と積層化することによって、面内にはランダム、膜厚方向には制御されて近接磁性粒子と相互作用する。これによって、絶縁性が向上して、膜厚方向の相互作用を主体として異方性磁界を制御することが可能である。3d遷移金属間合金であるFe-Mnは、Mn>30at.%で反強磁性へ相転移する。従って、Fe(強磁性層)とFe-Mn(反強磁性層)とをそれぞれ単層ナノグラニュラー状態で粒子間を非磁性絶縁体で分離して、さらに非磁性絶縁体と積層化してやれば、反強磁性-強磁性相互作用を利用した異方性磁界の制御が実現できると考えられる。予備実験として作成した(Fe-Mn)-AlO/Fe-AlOナノグラニュラー積層薄膜では、透磁率の周波数特性の共振周波数が2GHzを超えるなど高い高周波特性を示す一方で、比較的大きいμ"成分が全ての周波数帯域で現れる。これは印可磁場に対して薄膜内の磁場の位相が一定量遅れていることを示しており、磁場の強度が有る程度大きくなった段階で反強磁性層が強磁性層に変態した部分の磁化に対応していると考えられる。また薄膜の成膜で使用した基板(SiO2/Si)からの応力の影響も十分に考慮する必要が有ると考えられ、基板のバックエッチによる応力解放の可能性についても検討した。
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