アノード酸化皮膜を化成したアルミニウム試料を蒸留水中に浸漬したのち、レーザー照射により酸化皮膜を局部的に破壊・除去した。この試料をピロール溶液中に浸漬し、定電位アノード分極を行うと、レーザー照射部に不均一なポリピロール層が析出した。これは、レーザー照射部に自然酸化皮膜が形成したためであると考えられる。次に、皮膜化成試料を金めっき溶液中に浸漬し、レーザー照射を行ったのち、ただちに金めっきした試料にピロール重合を行うと、均一なポリピロール層を形成することができた。 上述のポリピロール電析試料を水酸化ナトリウム溶液に浸漬すると、素地のアルミニウム金属および酸化皮膜が溶解し、ポリピロール/金からなる構造体を分離することができた。しかし、ポリピロール中のイオンの脱ドープにより、アクチュエーターの機構を実現することは困難であった。そこで、構造体作成プロセスを変更し、金めっき微細パターン形成/素地・皮膜溶解/絶縁層塗布/ピロール重合/絶縁層除去の連続プロセスにより作成した微細ポリピロール構造体をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液中に浸漬し、サイクリックボルタモグラムを測定したところ、ポリピロールの酸化還元反応、すなわちイオンのドープ/脱ドープが起こることを確認した。 サイクリックボルタモグラム測定における試料の状態をビデオカメラにより観察したところ、ポリピロールの膨張・収縮により、試料が湾曲することがわかった。この構造体作製法を用いることにより、三次元形状を有する微細なアクチュエーターを作成できると考えられる。
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