喘息などを引き起こすディーゼル公害は、フィルターを用いた排ガス中の黒煙(スス)、タールの除去に伴うカーボン・ナノ粒子の飛散の増大により、年々深刻さを増している。カーボンのCOおよびCO_2ガスへの酸化はdown-hillな反応ではあるが、排ガス温度の800〜1000℃でもほとんど進行しない。本研究の目的は、"光触媒"と呼ばれる常温での有害ガスの浄化に一般的に使用されてきている半導体粒子を用いた光化学反応が適用できるか調べることである。この目的達成のために、価電子帯頂上の電子のエネルギーが十分に高く、伝導帯底部の電子のエネルギーが十分に低いSrZrO_3をTiO_2に複合化させて用いる。正孔の移動度を高めるためにアクセプターとなるガリウムを湿式法および固相焼結法によりドープすることを試みた。(1)ZrCl_2Oを硝酸に溶かし、アンモニア水で中和して得られたZrO_2ゾルをオートクレーブ中でSrOHと反応させることによりペロブスカイトのSrZrO_3単相を得ることができた。オートクレープ中で溶かしたGa硝酸溶液をZrCl_2O硝酸溶液に加え、アンモニア水で中和して得られたゾルをオートクレーブ中でSrOHと反応させる方法ではペロブスカイト単相は得られなかった。(2)固相焼結法によりGaドープのSr(Zr_<0.95>Ga_<0.05>)O_<3-δ>単相を得ることができた。色は小豆色で可視光域に強い吸収を示した。(3)Sr(Zr_<0.95>Ga_<0.05>)O_<3-δ>をTiOSO_4硝酸溶液に懸濁してアンモニア水で中和して、Sr(Zr_<0.95>Ga_<0.05>)O_<3-δ>/TiO_2複合体粒子の作製を試みた。得られたゾルを500℃で1h焼鈍したところ、TiO_2相は消失した。TiがZrサイトに溶解するためであり、焼鈍温度および時間について再考する必要がある。
|