ディーゼル公害の元凶となるカーボン・ナノ粒子のCOおよびCO_2ガスへの酸化はdown-hillな反応ではあるが、排ガス排出部温度の400〜600℃でもほとんど進行しない。本研究の目的は、"光触媒"と呼ばれる常温での有害ガスの浄化に一般的に使用されてきている半導体粒子を用いた光化学反応が適用できるか調べることである。この目的達成のために、伝導帯底部の電子のエネルギーが異なる2つ半導体を接合させてバンドを曲げ、光励起電子を分離してラジカル酸素を効率よく生成させることを試みた。先ず、価電子帯頂上の電子のエネルギーが十分に高く、伝導帯底部の電子のエネルギーが十分に低いSrZrO_3をTiO_2に複合化させることを試みた。正孔の移動度を高めるために固相焼結法によりアクセプターとなるガリウムをドープし、粉砕することによりSr(Zr_<0.95>Ga_<0.05>)O_<3-δ>粉末を得た。さらにゾルゲル法によりTiO_2粒子を付着させ、400℃で焼成した粉末試料にカーボン・ナノ粒子を混合して、Xeランプで光照射したが酸化反応はほとんど進行しなかった。SrZrO_3系粒子とTiO_2粒子界面のエネルギースパイクあるいはジャンプが原因であると推察され、SrZrO_3系はTiO_2との接合には適さないことが分かった。Sr(Ti_<0.98>Nb_<0.02>)O_<3+δ>へのTiO_2粒子の接合は良好であったが、光励起電子はSr(Ti_<0.98>Nb_<0.02>)O_<3+δ>側に流れることが明らかになった。光触媒として作用するためには電子はTiO_2側に流れる必要がある。そこで、アナターゼ/ブルッカイトおよびルチル/ブルッカイトの組み合わせによるTiO_2同士のホモ接合が有効であると推察した。このTiO_2ホモ接合を完成させるためにはアナターゼおよびルチルからブルッカイトへの転換技術を今後検討してカーボン・ナノ粒子の光分解の研究を続ける必要がある。
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