本課題は新しい触媒設計の概念に基づく固定化遷移金属触媒の創製と高選択的有機合成プロセスの開拓・構築で、具体的には「リビング重合の特徴を利用して"ポリマーの末端に配位子を導入することを特徴とした"新しい固定化型遷移金属錯体触媒の創製と有機合成プロセスの開拓」である。期間内には環状オレフィンのリビング開環メタセシス重合により合成した各種配位子を有する錯体触媒の合成手法の確立と、各種有機合成反応への応用を目的としている。平成17年度の成果は以下の通りである。 モリブデン錯体触媒によるリビング開環メタセシス重合を利用して、ポリマー末端にフェノキシ配位子やピリジンやビピリジル配位子を有するポリノルボルネンを合成した。ピリジンやビピリジル配位子を有するルテニウム錯体を合成・同定し、同均一系錯体触媒によるシクロヘキサノンの水素移行還元反応は効率よく進行し、反応速度は基質濃度に1次に比例すること、鎖長による活性への顕著な違いは見られないことを明らかにした。反応後の溶液をメタノール中に注ぐことで、触媒をろ過により回収し、繰り返し用いても触媒活性の顕著な低下は見られなかった。なお、反応系内や前後でのNMR測定より、ピリジン配位ルテニウム錯体が触媒反応に関与することを明らかにした。この触媒反応はカルボニル基選択的に進行し、アセトフェノンや5-ヘキセン-2-オン、2-アリルシクロヘキサノンのカルボニル基のみが優先的に還元された。これらの反応でも触媒の回収・再利用により顕著な活性の低下は見られなかった。 また、フェノキシ配位子を有するチタン錯体を合成・同定し、エチレン重合を検討した。
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