研究概要 |
貴金属代替触媒として期待されるペロブスカイト型酸化物のSO_2被毒を低減することを目的として硫黄成分を含む新規ペロブスカイト化合物の合成と特性解析を試みた。Mn, Fe, Co, Ni, Cuなどの遷移元素および希土類元素を含むオキシサルフェートの新規合成法について検討した結果、結晶構造内に硫黄を取り込んだ均一相の生成領域を明らかにした。得られた生成物の結晶構造解析をXRD、赤外分光、XAFSで解析し、XPSによる状態分析結果と合わせて結晶構造モデルを決定した。XRDパターンのRietveld解析の結果、Sの導入に伴ってCu-O_2距離が減少する一方、格子定数cが増加することが明らかになった。この構造変化を説明するモデルとして、ペロブスカイト層間へのSの挿入が有望であることを突き止めた。酸化還元特性を昇温法(TPD、TPR、TPRO)あるいは熱重量分析で解析した結果、硫黄の導入による電荷補償の結果、Cuの酸化数が低下することが明らかになった。この結果、硫黄を導入した化合物はSO_2との反応性が低下し、触媒反応のSO_2による被毒も低減することができた。C_3H_6完全酸化活性は、試料構造中へのSの導入によって向上した。特に、S導入試料では、過剰O_2とSO_2存在下においてC_3H_6転化率が大きく向上する現象が確認された。SO_2導入を停止しても高活性状態は比較的長時間維持されることから、SO_2吸着によって生成する表面種がC_3H_6酸化を促進する可能性が高い。
|