自律的に機能するアクチュエータを実現するために、pH変化に対して体積を変化させる両性電解質ゲルを作製した。本研究では、最終的には単純にpHに対して応答するものではなく、酵素反応と組み合わせてさまざまな生体関連物質に応答するものを目指す。この場合、中性付近のpHから酸性側あるいは塩基性側へと変化するものが多い。したがって、今年度はこの変化に対して膨潤するゲルの作製を試み、好ましい変化をするよう、成分の調節を重点的に行った。両性電解質ゲルは中性付近ではイオン性モノマー間に働く静電引力のため収縮し、酸性、塩基性側では一方のイオン性モノマーの解離による静電反発力により膨潤するという特徴をもつ。ゲルの骨格を形成するためのN-isopropylacrylamide (NIPAAm)、アニオン性モノマーとしてアクリル酸(AA)、カチオン性モノマーとしてallylamine hydrochloride (ALAM)または1-Vinylimidazole (VI)を使用した。人間の体温と同程度の37℃でpH依存性の測定を行ったところ、カチオン性モノマーとしてALAMを用いたものはpH8.5付近にならないと体積が膨潤しなかったのに対し、VIを用いたものは、pH6〜9.5の範囲でpHの増大とともに体積も増大した。またNIPAAmの比率を下げ、VIの比率を上げることで体積変化をより顕著にすることができた。また、このゲルにウレアーゼを固定化して尿素応答性ゲルを作製し、尿素濃度変化に伴う体積変化を確認した。さらに尿素濃度に応答して隔膜を押し上げ、流路内の溶液を移動させるアクチュエータを作製し、その機能を確認した。
|