研究概要 |
連続発振のレーザーをエネルギー源とするレーザー推進は,電気推進機と異なり電源を搭載する必要がないため、電力-重量比を極めて小さくできることに加え、大きな推力密度が期待される推進システムである。このような特徴から、軌道間輸送ミッションや、地球や惑星の大気を利用した推進ミッションなどへの応用が期待される。これまでの実験では,推進機の安定動作領域が大気圧以上に限られていたが、これを低中真空領域へと拡張することで,実用化へ向けて大きく前進すると考えられる。 申請者等は,低中真空領域で放電し易い誘導結合プラズマ(ICP)を推進機内に生成し,そのプラズマ領域にレーザーを吸収させ,ICPを加熱することで推進剤にエネルギーを伝達する方法を提案している.この手法により,動作領域が大気圧から低中真空領域まで広がることが期待される. 本研究では,強力なレーザー光や高周波電力を同時に扱うため,安全性に十分配慮した実験系を構成する必要があった.そのため,まず第一に,有意義なデータを確実に取得できるよう,実験基盤の構築を進めた.その結果,低中真空領域から大気圧を上回る圧力領域に渡って安定なICPを生成し,レーザープラズマとの相互作用を調査することが可能となった.これを受け,次のことが分かった. ・ICPとレーザープラズマの相乗的作用として,ICPの生成維持に必須とされる旋回流の導入が不要になるなど,興味深い現象が確認された. ・流れの速度が速いほど,レーザープラズマが光軸方向に伸びレーザーの吸収が促進されることが分かった. ・ICPによりレーザー吸収をより効率的に行うためには、ICPがつくるドーナッツ状の高温領域分布とレーザーの強度分布について最適化が必要であることが示唆された.
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