海洋生物資源、とくに海底域に生息する生物の研究は、進化・分化・分布を理解する上で重要である。しかし、深海底域に生息する生物の捕獲はネットや潜水船による偶然によるところが多い。ネットは、船上へ持ち上げる時の衝撃、他生物との接触により、柔体質である深海生物は壊れてしまうことが多い。また、個体保持に有利な潜水調査船による捕獲も、船上へ持ち上げた時の圧力温度ストレスにより、大抵が死滅する。その結果、深海性生物の研究は、形態的研究や分類・遺伝子解析のみに偏り、生態・行動・発生などの動的な研究が全くできない。本研究において、中長期飼育に適した簡易の加圧循環型深海生物用水槽を構築し、謎の多い深海生物を生存捕獲し、水槽において疑似的な深海環境を構築し、生物の新規な応答性を探索した。さらに、生物の生態・行動・発生などの動的な情報を検討し、深海生成物の持つ特徴を検討した。 中長期飼育観察用の加圧循環型深海生物用水槽は、予算枠に合わせ再度設計しなおし、より簡便なものとした。相模湾・駿河湾・富山湾における深海漁猟の漁船やJAMSTEC調査船を用い、深海底生物の生存捕獲を試みた。現在、低温環境で生育可能な生物を、新江ノ島水族館で飼育中であり、その状態は来館者に閲覧できるような状態である。現在中長期飼育の可能性を探っている。捕獲した深海生物に対し、人為的な圧力変動を加え、その回避行動、適応機構、魚種成熟への誘発などを試みた。
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