研究概要 |
今後の社会的重要な間題に,高レベル放射性廃棄物の地層処分問題がある.法律上は人間界に永久に影響を及ばさない場所に廃棄物を捨てることとされているが,この考え方では社会の理解が得にくくなっている.このため処分地のモニタリングも求められるようになってきており,物理探査法技術はこのための重要なモニター技術であると言える.しかし何をモニターし,その場所がどのような状態になった時に問題があるかを決めること自体が容易ではなく,そこで本研究では,技術マネジメント的観点から,高レベル放射性廃棄物の地層内処分問題を対象に以下のような調査研究を行った. 高レベル放射性廃棄物の地層内処分における法律や関連団体による処分事業の関連報告書の課題を探査技術適用のモニタリングの観点から精査した.前提である永久処分に対し,社会的理解が得られなくなっており,モニタリングの概念を導入し,これまでの論理を整理することは極めて重要であるとの考えから,法律に定められている地層処分のフローを法律に則して論理的な整理を試みた.一方,社会の理解の得るためのパブリックアクセプタンスの視点からは,どのような調査フロー,意志決定フローが適切であるかどうかを論じるため,市民的視点からの処分地決定フローを考案し,その意義を検討した.この際,意思決定支援ツールであるESL(Evidence Support Logic)法を用いて論理の整理を行い,不確定性の評価を併せて行った、また並行して米国,欧州の主たる国々における原子力関連機関ならびに関連実験サイトの調査,廃棄物処分事業の事例調査,技術理論の精査を実施した.これら一連の結果,ESLは地層処分に係る緒技術の限界と効用を不確定性を含む事象の意思決定論の観点から見て論理の整理手法として有効であり,さらには,どのような調査を行うべきかなどを検討する方法論としても有効な手法となりうるであろうことが判明した.
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