流電電位法は、硫化鉱床等の金属鉱床の探査を目的として20世紀初頭に考案された方法で、坑井を利用して地下深部の鉱体内に点電流源を設置して行なう電気探査の一方法であった。本研究グループは、この流電電位法の探査原理を発展させ、坑井を保護している鉄管(ケーシングパイプ)を線電流源として用いる流電電位法を考案し、線電流源を用いた流電電位法の探査理論の構築、探査データの処理法及び解析法の開発、3次元シミュレータの研究開発等を行なってきた。 線電極を用いた流電電位法は、地下の比抵抗構造を広域に調査するためのマッピング探査法であり、金鉱床などの金属鉱床の探査や地熱貯留層の探査等に利用されて成果を挙げている。しかし、これまでの流電電位法では地下の比抵抗情報だけが利用され、IP法(強制分極法)などで利用されている誘電率の情報(IP効果)は、全く利用されていない。そこで、IP法のように地下の誘電率を反映した充電率(チャージャビリティ)などの比抵抗以外の地下情報が得られれば、探査精度が向上するのみならず、地下の物性値の詳細な同定が可能となることが予想される。本研究では、線電極を用いたIP法探査の可能性を検討するため、線電極を用いたIP法の探査理論、線電極を用いた流電電位法でのIP効果に関連した基礎研究を実施した。 平成16年度は、探査理論とデータ解析に重点を置いて以下の研究を実施した。まず、本研究課題と密接な関係がある流電電位法とIP法の探査理論を基にして、観測された探査データから地下構造を推定するための探査理論の研究を行なった。次に、本研究グループで開発した比抵抗3次元シミュレータにIP効果を組み込み、任意形状の線電極による電位が計算可能な、3次元シミュレータプログラムを新たに開発した。平成17年度は平成16年度の成果を踏まえて、主として野外での試験調査に重点を置いて研究を進める予定である。
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