研究概要 |
真核生物のrRNA遺伝子は、数百から数千にも及び、動植物では染色体上でリピートしている。原生生物のなかにはそれを染色体外rDNAとしてもつものも多い。真正粘菌やテトラヒメナの染色体外rDNAは、50〜90kb程度の線状DNAで、末端にはテロメア構造があり、中央にある複製開始点をはさんで、26S、5.8S、19SrRNA遺伝子が向かい合わせにコードされたパリンドローム様二量体となっている。そのコピー数は、真正粘菌で200〜300、テトラヒメナで9,000もあるといわれている。真正粘菌のrDNA遺伝子には、エンドヌクレースをコードしたイントロンがあり、ホーミングイントロンと考えられている。真正粘菌とその近縁種、担子菌類やさらには藻類の葉緑体までも視野に入れて、以下の3課題に取り組んだ。1)多くの生物種でホーミングイントロンを調査しその起源を明らかにする。2)エンドヌクレースによる切断とホーミングの有無を検証しホーミングイントロンの遺伝様式を明らかにする。3)ホーミングイントロンあるいは染色体外rDNAを利用した遺伝子導入系(ベクター)を開発する。 16年度は、rDNA分子の多形とエンドヌクレースをコードしたイントロンの存否に注目して、国内外でP.polycephalumとDidymium類の野生種を収集し、ホーミングイントロンをrDNAとmtDNAで網羅的に調査した。また、真正粘菌だけでなく、微細藻類のNannochloris bacillarisやScenedesmus quadricaudaあるいは大型海藻のUlva compressaなどの葉緑体DNAやそのrRNA遺伝子にも注目して、ホーミングイントロンの有無を調査している。P.polycephalumには、rDNAの26SrRNA遺伝子の第3イントロン(PpLUS3)にエンドヌクレース(I-PpoI)がコードされている株があった。この領域を含む全rRNA遺伝子領域をPCR増幅し、イントロンの有無とI-PpoIの存否を収集した全ての株で調べた。その際、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)で、rDNAのサイズを測定し、分子長多形のある株も単離できたので、染色体外rDNAの遺伝様式を明らかにできた。
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