研究課題/領域番号 |
16657009
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮竹 貴久 岡山大学, 大学院環境学研究科, 助教授 (80332790)
|
研究分担者 |
富岡 憲治 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (30136163)
積木 久明 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (60033255)
|
キーワード | 種分化 / 生殖隔離 / アロクロニック / 異時性 / 時計遺伝子 / period / doubletime / ホストレース |
研究概要 |
イネの害虫であるニカメイガChilo suppressalisは、イネだけでなくイネ科雑草のマコモにも寄生することが知られている。そしてイネ個体群とマコモ個体群の間では、近縁な昆虫種間の生殖隔離機構の重要な要因の1つである交尾時刻が異なっている。すなわち、イネ系統は日没直後に交尾し、マコモ系統では日没約6時間後に交尾する。キイロショウジョウバエでは、交尾時刻の違いは測時機構の影響を受け、生殖隔離に時計遺伝子が関与する可能性が示唆されている。それゆえ交尾時刻の違う本種の個体群間では体内時計と測時機構に変化が生じている可能性がある。そこで本研究では、琵琶湖を有するため農薬散布が少なく本種の両ホストレースの同所的生息が確認された滋賀県で採集した両個体群を用いて、アクトグラフ装置による歩行活動の概日リズム計測を行なった。イネ個体群の概日リズムの自由継続周期(τ)は23.71±0.128時間、マコモ個体群の概日リズムのτは25.96±6.028時間で両ホストレース間に有意な差が見られた。この約2時間のずれはオスの活動時間帯のピークのずれと一致していることもわかった。 これらの発見は、ニカメイガの両ホストレースが、概日リズムに支配される測時機構を介した同所的な時間的生殖隔離(アロクロニックな生殖隔離)の状態にあることを示す。 そこで、概日リズムを制御する時計遺伝子period(約100bp)およびdoubletime(ほぼ全長:約1000bp)の塩基配列解析を行った。その結果、個体間およびホストレース問でいくつかのアミノ酸置換が発見された。今後、ホストレース間の交尾時刻の違いの原因遺伝子としての、概日リズム時計遺伝子の特定への道を築くことができ、将来の生殖隔離候補遺伝子の探索への可能性が開かれた。
|