本年度は、兵庫県神戸市再度山において、最大30年以上に渡り植生データがある永久コドラートおよびその周辺での土壌サンプルにより埋土胞子の存在を検証した。植生としては、アカマツ林およびコナラ林での土壌サンプルを対象とした。採取は当年の胞子の影響が少ないと考えられる晩秋から冬期に行った。 採土器によりカラム(100ml)に採取した土壌を小石や枝などを取り除いた上でよくかき混ぜて、4分割した。培地には耐熱性プラスチックでできたバイオポット(住化テクノス製)にバーメキュライトを入れて5000倍希釈のハイポネックス水溶液を加えて、オートクレープをかけたものを用いた。 サンプル土壌はバーメキュライトの上に数ミリ程度の厚さに広げた。室内において約20℃、蛍光灯により14時間照射の条件で行った。 ほぼ一月後くらいから、前葉体の姿が観察された。最上層の土壌(現地での深度0〜10cm程度)では、バイオポットあたり100個以上、カラムの土壌体積に換算して、4個/mlの胞子があることを示す。埋土種子の発芽がほとんどないことを考えると多量の埋土胞子があることがわかった。また深度40cm以下の土壌からも前葉体が形成されており、かなりの年数の間、埋土胞子は生存しているのかもしれない。一方、深度の深い土壌からの前葉体の形成は上層よりも時間がかかる傾向が見られた。 一部のサンプルではコケ植物の原糸体も観察でき、コケ植物においての埋土胞子の存在も示された。 前葉体から胞子体の形成が遅く、生育している前葉体の種の同定まではいたっていない。葉緑体DNAによる種の同定を試みたい。
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