高等植物は多くの細胞からなり、体制が複雑なので、形態形成の細胞レベルにおける解析が容易ではない。緑藻類の一種であるアオミドロは円筒形の細胞が一次元的につながった単純な形態をしている。流水に生息するアオミドロは藻体の末端細胞を仮根に分化させ、基質に付着している。藻体が切断されると、新しく末端に位置するようになった細胞が仮根に分化する。仮根形成において、以下のような現象が観察される。1)死んだ細胞が末端から脱離する。2)成長様式が分散成長から先端成長へと変化する。3)先端成長によって形成された先端が複雑に分岐し、ロゼット状の仮根が完成する。本年度は仮根細胞の先端が複雑なロゼット状の形態をつくるしくみについて解析した。本研究者らは微小管を破壊すると球状の仮根が形成されることから、この形態形成には微小管が重要な役割を果たしていることを示唆した。免疫蛍光抗体法によって、仮根細胞における微小管の配向も明らかにしている。植物細胞の伸長成長の方向はセルロース微繊維の配向によって決まると考えられている。また、セルロース微繊維の配向は微小管によって制御されることが知られている。そこで、仮根を形成している細胞におけるセルロース微繊維の配向を解析した。その結果、伸長成長と直角の方向にセルロース微繊維が配向していることが明らかとなった。この成果が植物生理学会で報告している。1)〜3)の現象には末端細胞で機械刺激によって活性化されるイオンチャンネルが関与してる可能性が示唆されている。従って、細胞末端では膜電位の脱分極が起こることが予想される。しかしながら、アオミドロではその測定は困難を極める。そこで、シャジクモ類の細胞をもちいて、実験を行った。その結果、カリウムに感受性のある脱分極が起こることを明らかにした。これらの成果は論文として報告した。
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