研究概要 |
(1)cDNAの塩基配列にもとづいて推定したマツカワ,Verasper moseri,のメラニン凝集ホルモン(MCH)を化学合成した.この合成ペプチドをマツカワの腹腔内に投与したところ有眼側の体色が明化した.これにより本合成品の活性を確認した. (2)βアクチンを内部標準とする逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)により,白背景色に馴致したマツカワの脳内MCH遺伝子発現量を黒背景色に馴致したマツカワのものと比較した.その結果,前者におけるMCH遺伝子発現量が後者のものよりも有意に高かった.一方,これら実験魚の視床下部外側隆起核におけるMCH産生細胞体数も,白背景馴致魚のほうが黒背景色順稚魚よりも高かった.以上の結果から,マツカワにおけるMCHの産生は背景色の影響を受けることが判明した. (3)マツカワには,黒色素胞刺激ホルモンとβエンドルフィンをコードするプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子に3種類のサブタイプが存在する.脳下垂体ではPOMC-A,-B,-Cが発現し,脳では主にPOMC-Cが発現する.本研究ではβアクチンを内部標準とするRT-PCRにより,白背景色に馴致したマツカワの脳下垂体および脳内におけるPOMC遺伝子の発現量を黒背景色に馴致した群と比較した.脳下垂体では,3種のPOMCとも黒背景色馴致魚のほうが白背景色馴致魚よりも発現量が高かった.脳でのPOMC-C遺伝子の発現量には背景色に応じた変化は認められなかった.
|