研究概要 |
1.メラニン凝集ホルモン(MCH)抗体,ユーロピウム(Eu)標識MCH,および固相化第2抗体を用いる時間分解蛍光免疫測定法(TR-FIA)を確立した。MCH濃度0.31ng/mlから40ng/mlの間で標準曲線が得られた。アッセイ内およびアッセイ間変動係数は9.0%(n=7)と9.5%(n=4)であり,α-MSHとの交差率は0.01%以下であった。また,最小検出量は15.5pg/well,回収率は90.3%であった。マツカワ(Verasper moseri)の脳,下垂体,血漿の競合曲線が標準曲線と平行になったことから,本測定系の有効性が確認された。 2.上記のMCH TR-FIA法により,白または黒色水槽で5ヶ月間飼育したマツカワの各種組織のMCH量の変動を調べた。マツカワ脳内および血中MCH量は,白水槽において黒水槽よりも有意に高かった。白水槽では黒水槽飼育よりも成長が良かった。この結果は,MCHがマツカワでは体色調節のみならず食欲にも関与することを支持する。 3.合成マツカワ・メラニン凝集ホルモン(MCH)はキンギョ(Carassius auratus)鱗に存在する黒色素胞中のメラニン顆粒をin vitroで凝集した。すなわちMCHはキンギョでも他の真骨類と同様に体色を明化するホルモンである。 4.平均全長5.6cmのヒラメ稚魚を白色および黒色水槽にそれぞれ15尾ずつ収容し5か月間飼育した。その結果,白色水槽飼育魚の方が黒色水槽飼育魚よりも無眼側黒化面積率が低く,脳内MCH濃度は高かった。すなわち,白色水槽飼育がヒラメの黒化防止に有効である。また,この現象へのMCHの関与が示唆される。
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