研究課題
従来の研究から、鳥類の大脳線条体は餌に到達するまでに要する時空間的投資量の予期値を符号化することが判明している。他方、大脳の外則に位置する弓外套は哺乳類の大脳前頭前野と機能的に相似であって、採餌に要する労働投資量の予期に与ることが判明している。このように、脳は外界の餌の生態学的現実を正しく表象するよう、進化を遂げてきた。本研究の目的は、第三の因子として餌の出現確率に着目した。ある餌は大きいが稀である。他方、ある餌は小さいが高い確率で獲得できる。量と確率の積(餌の期待値)が同じであっても、これらの2者のいずれを選び取るか、これは動物の生態学的背景によって決まる。認知過程に加わる生態学的淘汰圧を同定するために、カケスの貯食行動に着目した。本年度は第二年度として、(1)愛知県設楽郡稲武町の名古屋大学演習林に生息するカケスの個体群の観察を続けると共に、(2)実験室内の再構成系をニワトリ雛で実現する行動課題を開発した。(1)カケスの採餌生態の観察秋季(9月より11月)、稲武山中に分布するカケスの採餌生態を観察した。餌の出現確率の変動に対して、速やかに採餌選択を切り替えることを示唆する観察結果を得た。(2)収益逓減と喪失機会:生態的採餌状況の実験的再構成系の開発最適採餌理論(最適パッチ利用モデル)を再構成する行動課題を新たに開発した。餌場での滞在時間に伴い、給餌間隔が徐々に増える実験装置を開発したところ、雛は限界値定理の示唆する滞在時間の後、餌場を速やかに離脱することが判明した。更に喪失機会に対する選択の感受性を定量的に計ることが可能となった。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Behavioural Brain Research 168
ページ: 1-12
認知科学 12
ページ: 177-187
Behavioral and Brain Sciences 28
ページ: 604-605
European Journal of Neuroscience 22
ページ: 1502-1512