研究課題/領域番号 |
16657028
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 知二 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (60289030)
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研究分担者 |
橋本 佳明 兵庫県立大学, 自然環境科学研, 助教授 (50254454)
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キーワード | アリ擬態グモ / アリ / 熱帯林 / 種多様性 / モデル-ミミック関係 / ハエトリグモ科 / ネコグモ科 / マレーシア・サバ州 |
研究概要 |
アリ擬態グモおよびその潜在的モデルであるアリ類は熱帯林において著しい種多様性を示している。2006年度は、12月にマレーシア・サバ州ダナムバレー自然保護区の熱帯雨林において、両者の種多様性と空間的なアソシエーションをあきらかにするための野外調査とアリ擬態グモの捕食行動に関する実験を行ない、以下の結果を得た。 1)ダナムバレー保護区で得られたハエトリグモ科(Salticidae)およびネコグモ科(Corinnidae)に属するアリ擬態グモは、形態的な特徴から、ヤマアリ亜科擬態者(Formicinae mimic)、クシフタフシアリ亜科擬態者(Pseudomyrmicinae mimic)、フタフシアリ亜科擬態者(Myrmicinae mimic)、ハリアリ亜科擬態者(Ponerinae mimic)に分けられた。また、それぞれの擬態者グループにモデルアリ種(特定の種ないし種群)との類似性の高い高質擬態者(good mimic)と、全体としてアリには類似しているものの、特定のモデルアリ種というよりも複数のアリ群の特性をもつ低質擬態者(poor mimic)に分けることが可能であった。 2)特定のアリとアリ擬態グモの種特異的な空間的アソシエーションが存在することを示す証拠は得られなかった。ただし、アリの種構成は熱帯雨林の垂直的なハビタットや林内、ギャップなどの水平的なハビタット構造によって変化しており、それぞれの擬態者タイプの高質、低質擬態者に注目すると特定ハビタットへの偏りが見られた。 3)行動実験から、樹上性のアリ擬態グモは、地上性のアリ擬態グモや非アリ擬態のハエトリグモに比べると葉の表面を利用する頻度が高いことが確かめられた。一方、葉の表面に多いハエ類の捕獲成功率は非アリ擬態のハエトリグモの方が高く、潜在的餌資源密度の高い葉の表面での餌探索と捕獲成功にはトレードオフ関係があることが示唆された。
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